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ようやく『永遠の0』を読了。
category: レビュー | author: 唯井 遡
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    こんにちは、中年男子です。

     

    ようやく『永遠の0』を読了。

     

    とまれ、昨年のamazonベスト10に名を連ねるだけあって面白かったは面白かったのですが・・・。

     

    今どきの若い衆が読むにはかっこうの活劇でしょう。
    そこに、ちょっとセンチメンタリズムの風味があって、本作を“深み”のある作品に見せる一役をかっているようです。

    しかし、この作品を以て先の大戦を知ったつもりになるのは大変危険ですヨ、U君。

    この作品にあるのは、特攻隊員の視点から見た太平洋戦争であり、さらに、百田尚樹氏のストーリー・テリング上の妙であることを忘れていけません。

     

     




    この際、本作の設定などは本屋で児玉清氏の解説を立ち読みして頂くとして、中年男子の感想にいきなり入ります。ご了承ください。

    零選全編、零式戦闘機の大活躍が注目を引きます。
    この辺は、ゲーム感覚で読めるのではないでしょうか。
    まるで実戦さながら描写は、確かに自分が操縦桿を握っているようです。

     

    ことにヤクザを引退した設定の景浦介山の回想はその白眉です。
    国も関係ない、愛する者もいない、ただ敵戦闘機を撃ち落すことに執念を燃やす景浦の前に、一目を置かざるを得ない宮部久蔵が立ちはだかり、敵攻撃後の帰艦時に展開される模擬戦(?)の章(阿修羅)は、全編の中でも異様な殺気を帯びた部分でした。
    愛憎ない交ぜにした景浦の挑戦状を受けて立つ宮部。
    景浦自慢の相手戦闘機の進行方向前方への銃撃を宮部機に発射した瞬間。
    宮部機の姿が景浦の視界から消え去り、ふと気づくと自分の後方に付けていた瞬間の戦慄を語る景浦の言葉には迫真の臨場感があり、読むのが“苦しくなる”シーンでした。

    とはいえ、これは宮部久蔵を知る人たちの回想を順を追って読んできたからこその感想であって、いきなりこのシーンが展開されても読者は戸惑うだけでしょう。
    そういう意味で本作の創作は、「宮部は臆病者」との“意外”な証言からスタートして、以下、真珠湾/ラバウル/ガダルカナル/・・・と太平洋戦争の進行―――緒戦の快進撃から、戦局が次第に悪化し、ついに敗戦濃厚という―――にシンクロして証言が積み重なるという仕掛けになっているワケです。
    それがあたかも太平洋戦争の通史の観を呈するように見えるから、読み終わると何か太平洋戦争が分かったような錯覚を読者に与えます。

    考えてみればこういう創作は大変危険であり、一つ間違えば“戦意高揚”とも読めなくはない仕上がりになっています。

    時おり語られる歴史のifから、まるで、先の大戦は大本営の高級官僚、軍上層部の判断ミスがなければ勝てたかもしれないみたいな発言が飛び出してきます。
    そこへ特攻隊員の無残な散華(この言葉自体、使い方を慎重にする必要があります)が重ね合わさるのですから、血気盛んな若い衆には怒りみたいな感情も湧き起ってくるかもしれません(作者はそこまで作品のテーマにしていたかは定かではありませんが)。
    ―――作者は戦後生まれですから、見て来たかのような回想の出典を巻末に載せています。
    そこに並ぶのは、やはり特攻隊員の証言や著作群でした。

     

    そういうわけで、中年男子は本作を太平洋戦争のミクロ的視点に立った創作と位置づけます。
    従って、作品を以て先の大戦を知ったつもりになるのは大変危険です、との冒頭の感想が出てきました。

    そこで語られる戦場は個別の戦闘であり、全体の俯瞰がありません。
    故に、敗戦の責任はことごとく大本営の高級官僚、軍上層部にありみたいな語り口になってしまっています。
    この“現場感覚”は、サラリーマン諸氏の上司、上層部批判と微妙にだぶります。
    多くの読者は、もしかしたら、この部分に共感を示したのかも知れませんネ。
    ―――その気持ちを中年男子は否定しません。何時だって、上層部は現場のことを知らないと相場が決まっています。おまけに責任もとらない・・・。泣きを見るのは現場の一兵卒ばかりなり。

     

     

    U君。
    先の大戦を知りたいのなら、本作を入口にして、全体を俯瞰する作品に当たると良いでしょう。
    そして、何を読んだら良いですかととうならば、昭和天皇に係る著作・資料が最適ですと言いましょう。

     

    最期にブクレコの友達 Hiromasa Nagaiのレビューを参考に挙げておきます。
    世界大戦中の戦闘機手宮部の孫姉弟が、祖父の経歴を調べに戦友会の戦友達の話しを聞いてまわる。零戦、各海戦の話しを聞きながら当時の様子が現代風に解釈されて行く。例えば姉弟は、当時の軍事指揮官達の出世コースを現代の官僚に照らし合わせて議論したりしている。有名なレイテ海戦における栗田艦隊反転退去も議論される。しかしながらこういった議論は戦後何人もの作家、研究家が議論を重ねており、擁護派、中間派、反対派らの意見はかなり整理されてきている。今さらこの姉弟が調べ上げて紹介するまでもないし、議論も浅い。

    むしろ筆者は軍人として死を選ぶよりは、生きて帰還することを信念としていた宮部という人物に何かを語らせたかったのだろう。

    しかし、宮部を語る元戦友らの話しも真実性に欠ける。すでに戦況を伝える文献は数多く世に出ており、この著だけで戦況を判断するのは危険すぎる。真珠湾攻撃が広島長崎の原爆投下に繋がった、日本のだまし討ちだという説も短絡過ぎて危険だ。

     先の話しに戻って、日本の司令官達はエリート集団で、日本の多数の若い命を無意味に失わせたという論法が多く出てくる。これも危険な意見で、近代、戦争下においてはエリート集団が指揮を取るのは自明の理である。その中で競争意識や出世願望が現れるのも至極当然で、大地主や大企業、明治時代の官僚の子孫が司令官になるよりはよほど理に適っていた。

    更に現代社会で、このようなエリート意識の排除や官僚批判は、国力に負のベクトルを与えるという論議もあることを忘れてはならない。」

    まったく同感です。

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